一級建築士の萌える囁き~ツインソウルはお前だけ~
だが、そんな目の前の知らない男よりも警戒すべきは、あのN大学の萌音の後輩゛近藤くん゛だろう。

年は萌音や海音より年上に見えた。

萌音と一緒にラーメン屋に行き、近藤くんと呼ばせるぐらいだから、近藤は間違いなく萌音に気があるだろう。

海音がラーメン屋から大学の中庭に向かったのも、建築学科の学生に対して、萌音の近くには既に海音という存在があることを知らしめるためだった。

正直、春休み期間の大学にそれほど学生がいるとは思ってはいなかったが、思いの外、二人を見ていた学生がいたようで、つられて現れた人物はやはりライバル心剥き出して笑ってしまった。

大学の中庭のベンチでいちゃつき、顔を寄せ合ってキスしたあげく、抱き締めた態勢で自己紹介してきた海音を、近藤はどう思っただろうか。

萌音が在学中は、長嶺教授の心証を悪くしてはならないと、学生の誰もが萌音には手を出さないという暗黙のルールが敷かれていた。

近藤もそれに従ってきたのだろう。

しかし、悔しそうな表情は、何かを決意したようにも見えた。

ゆっくりしてはいられない。
明日は金曜日。

海音は更なる攻撃の手を緩めるつもりは毛頭ない。

゛一気に距離を縮めて、運命の片割れをこの手にしなければ過去の俺が浮かばれない゛

寂しい独り身のバスルームで、ぬるめのシャワーを頭から浴びながら海音は固く拳を握るのであった。
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