一級建築士の萌える囁き~ツインソウルはお前だけ~
施工主は森田英生、万智夫妻。

祖父から譲り受けたその物件に愛着を持っているのはよくわかった。

だが、大黒柱にこだわるあまり、コストや建設時間、大工の数などで折り合いがつかず、話は難航しているようだった。

「差し出がましいようですが、一つ提案をよろしいでしょうか?」

これまで黙っていた萌音が突然話し始めたため、海音も森田夫妻も少し驚いていたが『萌音は学生時代にデザイン賞を取ったことがある』という海音の紹介のお陰か、

「どうぞ。屈託のないご意見をお聞かせください」

と森田英生が微笑んだ。

「大黒柱を大黒柱として残すのではなく、家具としてリフォームしインテリアとして残すのはいかがですか?」

萌音の突然の申し出に、森田夫妻も海音も大きく目を見開いていた。

「大黒柱だけでなく、建替えの時に出てきた大梁材などの構造材や木質材をテーブルや椅子などの木製調度品に甦らせるはことも可能です。森田様がその気なら、私が一緒にデザインを考えてDIYすることも可能ですよ」

「柱として残すことばかりにこだわっていて、家具にするという考えは盲点でした」

嬉しそうな森田夫妻の様子を見て、萌音は手応えを感じた。

「もちろん、現物を見せていただかなければ再利用できるものかそうでないものかは判断はできませんが、柱として残すことが検討されていたくらいですから家具にはなると思います」

「それは大丈夫。今では手に入りそうもないほど立派な欅(けやき)だよ。森田さん、流川は二級建築士だけでなく、インテリアプランナーとエクステリアデザイナーとしてもいくつか賞を取っていますから安心して任せられますよ」

海音のあからさまな援護射撃に萌音は苦笑した。
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