一級建築士の萌える囁き~ツインソウルはお前だけ~
「萌音はすごいな。デザインから製作まで一人で完結できる無敵の建築士だ」

「さすがに家は建てられませんけどね」

海音と萌音が森田夫妻と別れた頃には、すっかり辺りは暗くなっていた。

森田夫妻に゛食事を食べていかないか?゛と誘われたが、そこは公私混同できないと断った。

現在は、佐和山建設本社に戻る社用車の中である。

「通信教育やオープンスクールを利用してインテリアやエクステリアの基礎を学んだんです。父や母の影響で、小さい頃から絵画製作やDIYには慣れ親しんでいましたし、とにかく物を作ることが大好きなんです」

車の中でも、デザイン帳にラフ画を描き続ける萌音の瞳はキラキラしている。

よっぽど好きなんだろうな、と海音は萌音の様子を微笑ましく思う反面、その情熱の一部分でも自分に向けてくれたらいいのに、と欲深いことを感じていた。

「明日さ、建築デザイン協会が主催するインテリアや建築模型の展示会が開かれるのは知ってる?」

唐突な海音の言葉に、萌音はガバッと顔をあげて彼を見た。

「えっ?どこで?お父さんからも聞いてないんだけど」

海音は食いつく萌音に思わずニヤけそうになるのを堪えて、

「会社向けの宣伝しかしてないからね。本当は俺の親父が行くところだったんだけど、都合が悪くていけないから俺に御鉢がまわってきたんだ。招待されてるのは2名・・・」

と、勿体つけながら言った。

「行く、それ私に行かせてください!」

萌音の食い付きの良さは、長嶺教授の言う通りだった。

萌音は展示会好きで、建築や美術の展示会があると聞けば、興味のある内容ならばどこまでも貪欲に追いかけて行く、と聞いていた。

明日の展示会には、有名な建築士だけでなく、インテリアデザイナーの作品も並ぶ。

彼らの名前を挙げると、益々萌音の瞳は輝いた。

゛さあ、食い付け゛

「俺は立場上、展示会に行かないわけにはいかない。せっかくの休みなのに俺と一緒でも構わないか?」

「是非、ご一緒させてください!」

こうして海音は、萌音の貴重なプライベートな時間をゲットすることに成功した。
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