一級建築士の萌える囁き~ツインソウルはお前だけ~
「着いたよ。行こう」

結局、満員電車の混み具合は変わらず、5駅の間、萌音は海音の胸の中に抱き込まれていた。

初めは緊張していたが、あまりにも混雑していたため、周りも鮨詰め状態。

誰も気にしてはいないと思うと萌音はいつしか眠くなった、いや、正直、寝ていた。

海音の声に目が覚めた萌音は、よだれが出てはいなかったかと赤くなりながら口元に手をやろうとして、海音の左手に遮られた。

またも手を繋ぎ、駅構内を歩く。

もはやこれはデフォルト・・・。

萌音は左手で口元を確認しながら、海音に手を引かれて改札を出た。

「もしかして、寝てた?」

改札から3番出口を出ると、芸術劇場まで500mという看板が見えた。

「・・・うん。寝てた」

ばれているなら仕方がない。

取り繕いもせず、萌音は事実を認めてそっぽを向いた。

「満員電車で寝るとか、やっぱり萌音は大型新人だな」

「だって、さわやんの腕の中が温かくて安心したっていうか・・・」

ツンツンからの思わぬデレ攻撃。

海音は危うくキュン死しそうになった。

「今、それを言う?」

「だって今聞かれたからでしょ?」

しかし、ツンツン萌音も安定の可愛さだ。

思わず抱き締めたくなったが我慢して、海音は萌音の手を引きながら、建築デザイン協会主催の展示会に向かった。
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