一級建築士の萌える囁き~ツインソウルはお前だけ~
トイレの洗面台の鏡に映る自分を見て萌音はため息をついた。

髪型も化粧も女らしさはない。

伸ばしっぱなしの長い髪、スッピンと変わらない薄い化粧。

カジュアルな服装にヒールのない靴。

何もかも先程の佐和田や、職場の上司である桜、同期のしのぶとは正反対だ。

これまでもこれからもそれが自分らしさだと思っていた。

男性のために自分を曲げたり変えたりすることは萌音の信条とは異なる。


゛恋は盲目、相手のために自分を綺麗に見せたい、犠牲にしてでも役に立ちたい・・・゛

そんな気持ちが理解できるようになるには、萌音の海音への思いはまだ芽生え始めた小さな種程度のもので、まだまだ時間がかかりそうだった。

゛運命の片割れなら、どんな私でも受け入れてくれるはず゛

萌音はそう、考え直し、気合いをいれるために両頬をパンと叩いて気合いをいれた。

「あら、妹さん、ごめんなさいね。お買い物の邪魔をして」

いつの間にやって来たのか、鏡越しに佐和田が萌音に声をかける。

「あなた、実の妹さんではないんだってね。でも妹のように可愛いって佐和山くんが言ってたわ」

改めて言われた゛妹゛のワードに萌音の心が軋んだ音を立てた。
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