一級建築士の萌える囁き~ツインソウルはお前だけ~
「海音さん、私に掴まって下さい」

「でもそれじゃあ萌音が潰れるよ」

苦笑する海音の美しい顔すらも痛々しい。

萌音と海音の身長差は20cmはある。

正に大人が子供を襲っているように見えて、シュールな地獄絵図になるかもしれない。

「寄りかからなくても、松葉杖代わりになるとは思います。私のマンションは目とはなの先だから、上がって休んでいって下さい。簡単な手当てならできますから」

駅に程近いとはいえ、一本奥に入ったこの路地に流しのタクシーはまずいない。

「一人で帰せないですし、海音さんが怪我したのも元はと言えば私のせいですから」

「違うよ。悪いのはあの男で、萌音は何も悪くない。受け身ができなかった俺も悪いんだ」

自力で立ちあがり、痛みに耐えながらも笑って萌音の頭を撫でる海音。

「心配ないよ」

と微笑む姿は美しいが、無理する態度は頂けない。

そのさりげない優しさと弱味を見せようとしない頑固な態度は、萌音の義理堅い性格と放っておけない母性本能に火を付けた。
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