一級建築士の萌える囁き~ツインソウルはお前だけ~
「どうぞ、上がって下さい」

「お邪魔、します」

゛バリアフリーにしていて本当に良かった゛

と萌音は心から思った。

病人や怪我人にはほんの少しの段差が致命的になるのだと今実感している。

できるだけ寄りかからないように気を遣っている海音だが、苦痛に顔をしかめているからかなり無理をしているのだろう。

「ここに座って」

ようやくリビングのソファにたどり着き萌音もホッとする。

「足を出して」

ソファの足元にしゃがみこんだ萌音が、ゆっくりと海音の靴下を脱がした。

長くて白い足趾(あしのゆび)、形のいい足。

そんな海音の足の外側、くるぶしの部分が赤く腫れていた。

「ちょっと待ってて」

萌音は、海音をソファに横たわらせると寝室に消えていった。

「湿布にかぶれたりはしませんか?」

「ああ」

「とりあえず、冷湿布を貼って様子を見ましょう。その間に夕飯作りますね」

海音の足首にペタりと湿布を貼った後、見たこともない優しい笑顔で萌音が言った。

「えっ?夕飯食べさせてくれるの?」

萌音の突然の申し出に、部屋の中を興味深げに見回していた海音が驚いたように顔をあげた。

「おなか空きませんか?怪我をさせたお詫びと、今日一日のお礼です。少しは甘えてくださいね」

「じゃあ、遠慮なく・・・」

「海音さんはジッとしてて。和食でいいかな?」

「萌音が作るものなら何だってご馳走だ」

「フフ。新婚さんみたいなやり取りで照れますね」

パタパタと駆けていく萌音を、海音が眩しそうに見つめていた。


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