一級建築士の萌える囁き~ツインソウルはお前だけ~
「へえ、さすが長嶺教授が推薦するだけある。製図が完璧なだけでなく、色合いも絶妙だ」

萌音は、背部から声をかけてきた中武主任の言葉で図面への集中を途切れさせた。

「もうお昼だよ。いい加減切り上げて。ほら、海音も」

同じように図面に集中していた海音が、驚いたように萌音と中武主任を見た。

「あ、中武主任、ありがとうございました。また昼御飯食いそびれるとこでした。流川さん、お腹すいただろ?」

画面の製図を保存し、海音が財布を持って立ち上がる。

「じゃあ、3人で社食に行こうか」

「二人でいけますよ」

海音の言葉に

「イヤイヤ、人気者の海音と美少女風の流川さんがいきなり連れだって歩いたら、今後、流川さんが女性陣から敵認定されるかもしれないからね。僕が先制攻撃を仕掛けておくのさ」

「ご心配されなくても、私と佐和山さんでは兄妹ぐらいにしか見えませんよ」

フッと鼻で笑う萌音を、不服そうに海音が見つめる。

「それは俺がフケてるって言いたいの?」

「私が童顔なだけです」

二人のやり取りを聞いて、中武主任が間に入る。

「まあ、まあ、美男美女のバディにはかわりない。周囲のやっかみは必須だろう。・・・さあ、流川さん、社食に案内しよう。今日は僕の奢りだ」

「いえ、上司から仕事中に奢られる理由がありません。割勘でお願いします」

可愛いげがないのは百も承知だ。

萌音は男性の多いこの業界で、対等とはいわなくても同じ目線で仕事をしていきたかった。

だから初日からマスコット扱いされるわけにはいかないのだ。

「そう?じゃあ、また今度ご馳走するとするか」

中武主任は気を悪くするわけでもなくあっさり引いてくれた。

歩き出す中武主任と海音を追って、萌音も画面にロックをかけると席を立って歩き始めた。

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