一途な溺愛王子様
キュッと目を閉じて、あの時の声をかき消すように頭を振った。

けど、そんなあたしの体を抱き寄せて、そっと腫れた頬にキスが降ってきた。


「女子と殴り合いのケンカをして、手もこんなに傷だらけ。腫れた頬だってまだ真っ赤だ」


そばに落ちたままの氷嚢を拾い、あたしの腫れた頬にそれを当てた。


「……っ」


キン、と冷えた氷がまるで針のようにあたしの頬を刺した。


「今この状況以上に、まだ俺を驚かす要素があるの?」


カンナは柔らかく、微笑んだ。

それは、絵本の中の王子様みたいな安心感を与えてくれる、優しい笑顔だった。


「ちゃんと冷やさないと、せっかくの美人が台無しになるよ」

「いいよ……見てくれだけ美人じゃ、意味ないもん」


冷たい氷が、あたしの心を再び凍らせようとする。

なんでこんなに臆病なんだろう。

なんで恋愛に関しては強い自分でいれないんだろう。


どうすれば、自分に自信が持てるんだろう。


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