一途な溺愛王子様
「その顔も、ひめの一部だよ。その性格だってそうでしょ」


思わず下がっていた顔が、カンナの手によって再び上に向けられる。


カンナの両手は暖かく、この氷すら溶かしてしまいそうなほどのもの。


だからかもしれない。あたしの氷かけていたこの心も、再び暖かさを感じ始めていた。


「たとえひめの顔がのっぺらぼうだとしても、俺はひめを見つけるよ」


カンナは笑って、階段を数段下がり、膝をついてあたしの手を握った。


「ひめ……どうか、俺だけのお姫様になって下さい」


言って、そっとあたしの手の甲にキスをした。

まるで白馬に乗った王子様が、姫に誓いを立てるみたいに。


この埃にまみれた階段にいるあたし達が、まるで宮殿の中にでもいるんじゃないかと思わせるほどのロマンチックなシチュエーション。


顔を上げたカンナは、曇りのない瞳を真っ直ぐにあたしに向けている。けれどそれもすぐに形を崩した。


これならどう? なんて言いたげに、いつもの様子でカンナはあたしに向かって笑ったからだ。


このまま引くのは癪な気がして、あたしはカンナのノリに便乗することにした。

プリーツスカートの裾を少しだけ持ち上げて、小さくお辞儀を返しながら微笑みを携えてこう言った。



「……王子様の仰せのままに」


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