一途な溺愛王子様
「なんでって、俺、あなたのこと知らないので付き合えません」


これ以上の言葉はもうない。

むしろこちらが知らない人物が俺のことを知っていて、さらに好きになりました。なんて、怖いし。


この女子の隣を通り抜けて再び立ち去ろうとしたら、諦めきれない彼女はさらにこう言った。


「じゃあ、友達からでもどうかな? お互いに知ってーー」

「友達に? あんたが俺の?」


友達なんていらない。友達だったらヤローでいい。下心しかない女子なんて必要ない。


「俺、あんたの事なんて知りたいとも思ってないから」


先輩だから一応敬意を持って丁寧に返事したつもりだった。けど、そうするとこれだ。

だから告白なんてしてくる女子にはこっぴどく振るのが一番だと、俺はこの時改めて痛感した。


もう二度と俺に告白なんかしたいと思わせなければ、何度だって俺の時間を潰しにかかってくるから。


「それに、俺、あんたみたいな友達なんていらねーし。そもそも無理でしょ、気持ち悪い」


再び俺は歩き出した。今度ばかりはあの女子も俺を追いかけて来ようとはしなかった。



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