一途な溺愛王子様
どっと疲れがこみ上げてくるのを感じて、俺は校舎裏から校門へと向かう道の途中にある食堂前の自販機で缶コーヒーを買ってから近くのベンチに座った。


放課後、とっくに生徒は帰宅したか、部活へ行ってるだろうこの時間。

普段は人でごった返しているこの場所が、今は人気がなくしんと静まり返っていた。


「はぁ……」


思わずため息をついて、缶コーヒーのプルタブを押し開けた。

と、その時だった。


「あたしのそばで、幸薄そうなため息つかないでくれる?」


どこからともなくそんな言葉が聞こえて、誰もいないと思っていただけに思わずベンチから飛び退いてしまった。

ちょうど夕日が眩しく照り返し、逆光のせいでそこに立つ人物が誰なのか確認することができない。


「さっき、告られてたでしょ。ひどい振り方するのね」


その女子はそう言って、ジュースを飲み干したのか、空いた缶をステンレスのゴミ箱にポーンと投げた。


カシャンと音を立てて、それは見事に目的の場所へと入って行った。


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