一途な溺愛王子様
「なぁ、康介。お前バイト探してるって言ってなかったっけ?」

「ああ、なんだよ急に」


俺が康介を呼び出してそんな話をすると、こいつは訝しげに顔をしかめた。


「ってか最近ひめにちょっかい出してるみたいじゃねーか。カンナが女子のケツ追っかけてんのとか初めて見たわ」


だろうな。初めて追いかけてるんだから当たり前だけどな。


「お前、なに考えてんだ? ひめは俺のダチでもあるんだからな、遊びだったらやめとけ。あいつああ見えて純粋だぞ」

「遊びで女のケツ追っかけるかよ」


康介はまじまじと俺の顔を見た。


「ふーん、ならいいけど」


どこか物珍しそうなそんな顔を俺に向けた後、口元をにやつかせた。


「まぁ、お前、ひめにはかなり嫌われてるけどな。しししっ」

「知ってる。だからお前に頼みがあるんだよ。俺が迎えに康介のクラスに行くまで、ひめを引き止めておいて欲しい」


明らかに面倒くせーって顔で俺から距離を取るが、俺は本気だ。


「俺がそっちのクラスに行くまでの間でいい。お前のクラスのHRが早い時や、俺のクラスが終わるのが遅い時の足止めだけでいい」

「えー、無理だろ。ひめ、そういうの気づくと思うぞ。なにせお前、最近毎日こっちのクラス来てるしよ」

「タダとは言わない。報酬は払うし、なんなら俺の知り合いがやってるバイト先も紹介するぞ」


康介は腕を組みながら「んー」としばらく唸った。


「その報酬はマジなんだな?」


俺は静かに首を縦に振った。


「ただし、ひめにはこのこと絶対にバレるなよ」


康介も同じように首を縦に振って、満面の笑みをこぼした。


「まぁ、やってみるか」

「さすがは康介」


俺は康介と握手を交わした。こうして俺と康介の取引が成立した。


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