一途な溺愛王子様
……のってしまいました。
「……! お、美味しい!」
口の中に入れた瞬間、とろけるように消えてゆき、やがて幸福感だけがあたしの脳内を占領する美味しさ。
決して甘すぎない上品な甘さと、上質なショコラがあたしを虜にして離さない……。
「幸せすぎる……」
思わず声に出してしまった。でもそんなものはどうだっていい。あたしは口の中のショコラの余韻にどっぷり浸っていた。
「それは良かった」
ただ、目の前にカンナがいなければ、もっと幸福感に飲み込まれていただろうに。
「このお店、どうやって見つけたのよ」
電車を2つ乗り継いだところにあるこのお店は、店の前で2時間以上待たされる事もザラだと言われるほどの人気店だった。
店に着いたとき初めて、以前テレビで取り上げられていたお店だったのだと、その外観を見て知った。
お店はとても小さくて、基本は持ち帰り専用。ただ、店内の奥には小さなテーブルが少し設置され、そこで食事ができるようになっていた。
テレビで取り上げられると混み合うことが分かっていた店主は、古株の顧客を大切にしたいが為に、テレビの取材は許可したが、店の名前や場所は一切言わなかった。
それが余計に人気を呼んだのだけど。
実際にすごい人気だ。外にはまだ長蛇の列をなしてるし、予約は1ヶ月待ちだという。
だからこそカンナがどうやってこの店を見つけて予約まで取り付けたのかが疑問でならなかった。