一途な溺愛王子様
「ひめを連れてきたい一心で頑張ったんだ。ご褒美はキスでいいよ」

「するか!」


さらりとそんな事を言ってのけるカンナに対して、ひめはあっさり断ってケーキをさらに一口食べた。

カンナと話して心が荒ぶった後は、ケーキで浄化してもらおう。

そんな風に思いながら、あたしは美味しさのあまり頬を両手で持ち上げた。


……なん口食べても変わらぬ美味しさ。カンナと一緒っていうのを差し引いても幸せになれる美味しさだわ。


「でも、予約までしておいて、あたしが来ないかもって思わなかったわけ?」


そもそも予約したのがかなり前なのだろうけど、カンナはそんな話をおくびにも出さなかったわけで、あたしが来るかどうかもわからないと言うのに。


「でも、こうしてひめは来たでしょ?」

「断ることだって大いにあり得たと思うけど? だってカンナこのお店の情報なんて一切教えなかったじゃん」

「それでもひめは来たでしょ? 俺はひめが何を好きなのか知ってるからね」


虫酸(むしず)が走るわ。笑顔でさらっとそんなことを言ってのけるあたり、ムカつくんだけど。


「知ったようなこと言わないでよね。あんたがあたしの何を知ってるって言うのよ」

「そうだな。ひとまずひめの好物や性格は知ってるよ」

「そんなのたったの一部じゃない」


全て知ってるなんて言わせない。何にも知らないくせに。

そう思いながらあたしはパクリとケーキを食べた。幸せな味が、カンナのムカつく態度を緩和してくれるんだ。


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