一途な溺愛王子様
「じゃあ俺は、これからひめのことを知っていくんだよ。もっとひめの事知りたい」


カンナは縦肘をついて、指先をとん、とこめかみに当てながらあたしを見つめて微笑んだ。


「あっそ」


普通の女子ならここで、キュンとしたりするのかもしれないけど、あたしはしない。あたしはカンナの正体を知ってるから。

……けど、なんだかんだ言っても、結局はカンナの言う通りこの店に来てるし、ケーキは喜んで食べてるし、まるでカンナの思惑通りにことが進んでいるのが何より気に食わない。

でも、ま。食べ物には罪はないので。そう思って再びケーキを頬張った。


「……って、どうでもいいけど、カンナはケーキ食べないの?」


カンナはケーキを頼まず、ブラックコーヒーを飲んでいる。


「うん、俺あんまり甘いもの得意じゃないから」


「そんなに甘くないってば。この店に来て、ケーキ食べないなんて何しに来たのかわかんないじゃん」


別にケーキだけじゃない。ムースやら焼き菓子だって置いてある。このケーキも甘さが控えめだけど、もっと甘くないものは探せばあるはず。

せっかく予約までして来た人気の製菓店なんだから、何か食べないと勿体無いとは思わないのだろうか……ほんと、カンナって変なやつ。


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