一途な溺愛王子様
「……あっま」


そう言ってほんのり目尻を歪ませながら、ペロリと舌を出したカンナ。

かく言うあたしは、驚きのあまり固まってしまった。


「おーい。ひめ、大丈夫?」


あたしの顔を覗き込んでくるカンナに、思わず身を引いた。脳が活動していなくても体は正直だ。カンナが嫌いだという条件のもと、あたしの体は距離を取った。


「きっ、たないなぁ!」


思わずフォークを紙おしぼりで拭いたが、それでもそのフォークを使用して食べる気にはなれない。だからあたしは店員さんにフォークを落としたから新しいものをくださいと頼んだ。

そんな一連の流れを黙って見ていたカンナが、ぼそりと一言こう言った。


「……それはちょっと、傷つくな」


縦肘ついていた手で口元を覆い、カンナはふてくされたように窓の外を見ている。


……勝った!


あたしは思わずガッツポーズをテーブルの下でした後、心置きなく残りのケーキを食べ干した。

もちろん、店員さんにもらった新しいフォークを使ってだけど。


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