一途な溺愛王子様
「……ぶふっ」


下民って……怒ってる癖に、珍しくコウのノリに乗ったカンナが珍しくて思わず吹いてしまった。慌てて口を両手で押さえたけど、後の祭り。カンナもコウもあたしを見てる。


「ひめー、お前も何とか言ってくれよー。カンナが俺のこといじめるんだぜー? コウのことをいじめていいのはあたしだけよ! とか言ってやってくれよー」


コウがあたしに助けを求めながら、自分の両腕の内側を擦り合わせながら腰をくねらせている。


「キモいし! ってか何それ、あたしそんなこと言ったこと、一度もないでしょーが!」


ってか、何だよその設定は。

あたしがコウを手で追いやると、その手をカンナがぎゅっと掴んだ。


「康介、ひめに変な絡みすんな。殺すぞ」


ヒヤリとした視線に、重低音で放つガラの悪い言葉。こいつのどこが王子様なんだ? 一年生達に教えてやりたい気持ちになった。


「えーカンナひでー! ただのジョークじゃねーかよ」

「そのふざけたジョーク、次言ったら殺す」

「やっぱ、ひでー!」


俺の方がひめと幼馴染歴長いのに……なんてコウがしょぼくれてる。けど、それより何よりーー。


「って、カンナ。なにどさくさに紛れて、手握ってんのよ。離してよ」


あたしがカンナの手を振りほどこうと必死になっているのに、カンナは涼しげな顔であたしを抱き寄せた。


「えっ、抱きしめてって?」


誰か、カンナを殺してくれ。


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