一途な溺愛王子様
「耳悪いんか! 誰もそんなこと言ってないでしょーが。ってかそもそも、そう言う前に抱きつくのもやめなさいよ!」


あたしはカンナの力に抵抗するけど、悲しいかな、男と女とではどうあがいても埋めきれない力の差があって、今まさにそれをまざまざと見せつけられている。


「本当にやめて。あたしこういうの好きじゃないから」


真剣な顔で言ったこの言葉はさすがのカンナでもダメージだったのか、やっとのことで解放された。と、ちょうどそのタイミングで予鈴のチャイムが鳴った。

朝からゴリゴリ体力を削られて、一時間目から体育を本気出してやった時並みの疲れがどっと押し寄せてきた。


「予鈴鳴ってるじゃん。自分の教室に戻りなさいよ」


ってかそもそも自分の教室でもない癖に朝一番に乗り込んでくるのもやめて欲しいんだけど。


「じゃあ次の休み時間に会いにくるね」

「もう来なくていいから……」


やばい、相手する元気すらない。

あたしは手をひらひらさせながら机に上体を突っ伏した。すると、それは不意打ちだった。

吐息がかかる距離。カンナはそっとあたしにこう耳打ちをした。


「そんなに寂しいこと、言わないで」


言った後は、あたしの後頭部にキスのおまけ付きだ。

この後教室内に女子達の悲鳴が轟き、あたしの安息が奪われたことは言うまでもないーー。


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