一途な溺愛王子様
ちょうどそんな時だった。

神はあたしに味方した。


「コラーお前らそんなとこで何やってんだー! とっくに予鈴鳴ったんだからさっさと教室入れー!」


校舎の窓から先生が叫んでる。

カンナはそれでも動こうとしない。だからあたしは、カンナの体を押し退けて、走り出した。


逃げろ。ヤバイ。このままじゃ、ヤバイ。


本能がそう言っている。これ以上いたらダメだって。


あたしらカンナの手から抜け出した後後ろを振り返った。

けど、カンナが追ってくる様子はない。


『ひめは俺のことが、好き?』


そんなの決まってる。決まってるじゃん。

あたしはカンナの事なんて好きじゃない。

好きなわけない。


カンナだって、あたしの事嫌ってたじゃん。毛虫でも見るような目で見てたじゃん。

あんなに嫌ってた人が急に180度意見を覆したりする?

普通なくない?


嫌い、から、嫌いじゃなくなる。

嫌いだと思ってた、けど、案外嫌いじゃないかも。


……それなら分かる。けど、カンナはそうじゃない。

カンナはあたしを心の底から嫌い、不快な存在、から、あたしを好きになった。

間の工程なんて一切見せずに。


なんでなの?


そんな人の意見を、あたしは信用できないよーー。


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