一途な溺愛王子様
外の風に当たると少しだけ気分が良くなる気がした。

病気でもないのに、今は風邪をひいて寝込んでいる時よりも最悪な気分だった。

体育なんてやる気にもならず、クラスメイトと会話する気にもれず、今日一日はずっと保健室に閉じこもっていようかとそんな風に考えながら保健室へ向かっている矢先だった。


「雨宮美姫ってマジでムカつくー!」


思いがけないところで自分の名前が聞こえてきて、思わず足を止めた。

さらにさらに言えばその言葉も、言葉尻も、全てが悪意に満ちていた。


「今朝の見た? 校門で神無月くんといちゃついてたっしょ?」

「見たみた! なにあれ。あんなんで付き合ってないとかなんなの? あれ絶対雨宮が誘惑してんでしょ」

「マジで色目使ってんじゃねーよって感じ」


食堂の近く。誰もいない長椅子に座って毒を吐きまくってるのは女子三人組。あたしは思わず会話に聞き入ってしまった。

そっと誰が言ってるのか確認しようと草むらに身を潜めて覗き見ると、それはこの間あたしにケンカふっかけてきた女子達だった。

言われてる内容はめちゃくちゃで、ひたすらあたしの悪口。ムカついて思わず文句言いに出てやりたいところだけど、それをするだけの気力も体力も足りない。

誰が言ってるのか確認したし、さっさと立ち去ろう……そう思った時、あの長身の女子がこう言った。


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