一途な溺愛王子様
「知ってるんだから……」

「だから、なにを?」


ゴクリと生唾を飲み込んだ。その勢いで、あたしは一気に言葉を吐き出した。


「あたしのこと、本当は好きでもなんでもないんでしょ? 全部知ってるんだから。全部バレてるんだから!」


さっさと白状すればいい。カンナが誰と賭けをしているのかは知らないけど、このゲームはもう終わりだ。


「好きでもないくせに、好きな振りして人のこと振り回すのはさぞ楽しかったでしょうね」


喉の奥が苦しい。声が裏返りそうになるほど、喉がカラカラだ。

でも、それでも、言い出したらもう、止まることも、後に引くこともできない。


「賭けだったんでしょ? あたしを落とせるかどうか」


もう元には、戻れない。


「おかしいと思ったのよ。カンナはあたしのことなんてこれっぽっちも好きじゃなかったのに、突然あたしに近づいてきて、アプローチしてきて」


あたしに甘い言葉を囁きながら、とろけるような笑顔を向けてきたのも、嘘だったんでしょ。


「それもこれも全て、賭けの為だったんでしょ」


カンナの笑顔も。

温もりも。

あの時の、キスも。


ーー全ては嘘だった。


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