一途な溺愛王子様
全て言った。言い切った。


あたしは静かに黙って、カンナの返答を待ったけど、カンナはただ驚いた表情で押し黙っている。


「それ、どこから聞いたの?」


どこから聞いたの、だって。否定もしないんだ。

がっかりした気持ちと、どこか悲しいと思う気持ちがあることに気がついて、あたしは意外とカンナと過ごす時間を楽しいって思ってたんだと気付いた。

それが何よりあたしを幻滅させる。

そしてそれは同時に、怒りに変わっていく。


バカみたい。全部、バカみたい。


あたしはカンナの横をすり抜けるように、立ち去ろうとした。けど、カンナはあたしの腕を掴んだ。


「もう話すことなんてないんだけど」

「俺はある」


何を今更。言い訳でもするつもりだろうか。


あたしはカンナを思いっきり睨みつけてやろうと振り返ると、カンナの形相を見て思わず息を飲んだ。

カンナは静かに怒っていた。黒い瞳の奥には燃えるような強い怒りが見えて、あたしもそれを受けて徐々に怒りが強くなる。


「あたしは無いって言ってるじゃん」

「ひめはずるいね。大事なところでいつもちゃんと言わないし、話も聞こうとしないなんて」

「あたしがいつーー」

「今まさにそうだろ!」


ぴしゃりと言ってのけるカンナの言葉には、あたしを黙らせるほどの力強さがあった。


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