一途な溺愛王子様
「ひめ」


『……がっかりだよ』


あの声がまだあたしの脳内に響いてる。


がっかりしたのは、こっちだ。

勝手に賭けの対象にしてたんでしょ?


『ひめは俺の言葉より他の誰かの言葉を信じるんだ?』


だって仕方ないでしょ。信じろという方が無理じゃん。

簡単に態度を変える人のことなんて、意見を180度変える人の言葉なんて、信じられるわけがない。


「ひめって!」


ぐいっと手を引っ張られて、あたしは後ろ向きによろめいた。

同時に片手で持っていたミルクティーが宙に浮かんで、カランという音を立てて地面に落ちていく。

そんな様子を黙って見ていたあたしは、あたしの体がコウに抱きしめられているって気づくまでかなり時間がかかってしまった。


「あっ、ぶね。もうちょいでジュースがモロにかかるところだっただろ」

「……って、え?」


あたしがちらりと横を向くとコウの顔があった。


「うへぇ!」


なんだこの言葉、って頭のどっかでは思ってるけど、驚きすぎてそんなことはどうでもいい。


「タンマタンマ!」


コウは無実だとでもいうように、両手を上げてあたしから一歩下がった。


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