転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ~婚約式はロマンスの始まりですか!?~
 時計を見上げてそう気づいたのと時を同じくして、教室の扉が開かれた。

「ヴィオラ、もう講義は終わったんだろう。まだ、戻らないのか」
「――リヒャルト様!」

 扉が開かれたかと思ったら、この国の皇太子であるリヒャルトが顔を覗かせる。彼の登場に、スティーシャもリネットも、それから他の少女達も一気に焦った様子だった。

「こ、皇太子殿下にはご機嫌麗しく――」

「お、お目にかかれて光栄です」

 スティーシャとリネットが慌ててスカートを摘まみ、頭を垂れる。他の少女達も同じようにした。

(そうよね、本来はそうすべきなのよね……!)

 さまざまな事情により、すっかりリヒャルトに妹分として扱われているヴィオラは、他の少女達とは違って、リヒャルトを前にしてもさほど委縮しない。
 出会ったばかりの頃はそんな時期もあったけれど、今ではリヒャルトのそばにいるのが一番安心だとも思っている。
 けれど、それと礼儀を守る、守らないは別問題だ。
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