転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ~婚約式はロマンスの始まりですか!?~
 放り出されていた残りのヴィオラのドレスから、タケルは腰に巻いていたサッシュを取り上げる。血を吸わなくなった布は捨て、新しい布を傷口に当てて、その上からサッシュをきつく縛り付けた。

「これで、まあいいだろ。急ごう。どこに運ぶ?」
「――こっちだ」

 毛布を担架のようにして、リヒャルトとタケルの二人で、急いで満月宮の裏口から中に運び込む。
 セスを運び込んだのは、裏口のすぐそばにある普段は使われていない部屋だった。
 ベッドのカバーは剥がされていて、リヒャルトはそこにセスを横たえた。

「あの、リヒャルト様……」

 連れてきたところで、なにができるわけでもないということに気づいてしまう。侍医を呼べば問題になる。

「リヒャルト、こいつ訳ありだろ? ミナホ人の医者を連れてくる。俺が命じれば口は閉じているはずだ」
「――頼む」
「俺の付き人ってことで満月宮に滞在してるから、すぐに呼べる。あと、たぶん湯とか清潔な布とかが必要になると思う」
「そ、それは私が。ニイファにお願いしてくる」
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