転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ~婚約式はロマンスの始まりですか!?~
「――すまない」

 リヒャルトがふたりに向かって頭を垂れる。ヴィオラは慌てて首を横に振った。

「すまないとか、そんなんじゃないですよ、リヒャルト様。大事件なんだもの。みんなで協力するべきです」

 裏手の階段から、目立たないようにこそこそと自室へと戻る。
 身体を覆っているリヒャルトの上着が、とても重たく感じられた。

「ニイファ、手を貸して!」

 ヴィオラが部屋に飛び込むと、ニイファは目を丸くした。下着だけで帰ってきたのだから当然だ。

「あのね、秘密を守って」
「……もちろんですとも」
「一階の、裏手の方の階段に近い部屋。そこに怪我人がいるの。訳ありで――皇宮のお医者様にはお願いできないから、今、タケル様がミナホ人のお医者様を連れてきてくれるの。ニイファは、清潔な布をたくさん持って行って。あと、傷を洗うのにお湯もいるって。私も着替えたらすぐに行くから」
「――かしこまりました。他に必要と思われる品も、適当に運んでおきます」

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