転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ~婚約式はロマンスの始まりですか!?~
「縫うぞって! 傷口を消毒するだろ、それすごく痛いだろ、先にそいつに言ってやれ――うぎゃあ!」
一番騒いでいるのは、なぜかタケルだった。
「タケル様、黙っていてください。ニイファ殿、私が合図したらその瓶を渡してほしい」
ニイファは青ざめた顔をしながらも、医師のそばで指示に従っている。リヒャルトは、セスの身体を押さえる係に回っているようだ。
「――ど、どうしよう……」
ヴィオラは、その場にぺたりと座り込んでしまった。急いで着替えて戻ってきたものの、ヴィオラにできることはないようだ。
セスの声からくぐもった声がもれた。
「……セス、しっかりしなさい。ここは皇宮ですよ。リヒャルト殿下の前でみっともないところを見せるつもりですか?」
ニイファの言葉に、セスがなにか返した気配がしたが、内容まではヴィオラのところには届かなかった。
床に座り込んだまま、自分の口から悲鳴が漏れてしまわないように両手で口を押さえていることしかできない。