転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ~婚約式はロマンスの始まりですか!?~
 秀麗な美貌の持ち主であるが、以前は表情を消していることが多かった。ヴィオラも親しくなってから笑顔を見ることが増えた気がする。
 クィアトール宮の前には、ヴィオラを満月宮まで送ってくれる馬車が待っていた。三人がそれに乗り込むと、馬車はすぐに走り始める。

「皇妃様がお呼びなのですって。満月宮に着いたら、支度のために先に行ってもらえる?」
「かしこまりました」

 ニイファは思案の表情になった。
 ヴィオラのクローゼットの中身をすべて把握しているニイファは、今日にふさわしい装いを頭の中で組み立てているのだろう。
 それがわかっているので、ヴィオラはあえて先にそう言った。その方が、宮に戻ってからすぐに動き始められるからだ。
 皇妃の前に出るのに、講義のために身に着けた服のままというわけにもいかない。面倒に感じることもあるが、皇宮で暮らしている以上、こちらの風習に合わせることも大切だ。

「今日はサンルームは暑すぎるから、母上の居間で待っているそうだ」
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