転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ~婚約式はロマンスの始まりですか!?~
「……私は、まだ時期ではないと申し上げたのですが、ティアンネ様も焦っておられたのでしょう。今、陛下の身になにかあれば、あの方の地位はますます危ういものとなる」

 長年の間、皇妃の不遇の原因となったティアンネ妃。皇妃の息子であるリヒャルトが皇帝となれば、彼女の地位はますます危ういものとなる。
 それを理解しているからこそ、皇帝が倒れたと聞いてティアンネ妃は動かざるを得なかった。
 かつての愛情だけを頼りにし、皇宮に乗り込んできたのも、リヒャルトに対して直接手を下してやろうという思いがあったのかもしれない。

「なぜ、セスを斬った」
「あれは、オストヴァルト帝国で生まれた。私のあとを継ぐように育ててきたつもりでしたが、半分は帝国の血が流れている――もっと早く、手を離してやるべきだったのかもしれません」
「――それなら、なぜ」
「ティアンネ様のためにも、逃がすわけにはいかなかった。斬りそびれたのは、私の落ち度でしょう」

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