転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ~婚約式はロマンスの始まりですか!?~
その肩がわずかに揺れているのを見て、涙を流しているのを知った。

「――リンデルト。ティアンネ妃も、命だけは助かるように父上にお願いしてみる。だが、あまりあてにはするな」
「――感謝します、殿下」

 リンデルトの声は、とても小さかった。
 彼も理解してはいるのだろう。
 オストヴァルト帝国の皇帝が、二度も裏切った相手を許すなどということはあり得ない。リヒャルトの言葉は、気休めにもならないのかもしれなかった。
 リヒャルトは急ぎ足で部屋を出る。今は、とにかくヴィオラの顔を見たかった。

(今の気持ちを周囲に説明しろと言われたら、俺もとまどうな)

 相手はまだ成人前。十二も年が離れている。
 しかも、ヴィオラの場合、実年齢よりもだいぶ幼く見えるという現実もある。
 一人前の女性として見ているか――と問われれば、間違いなく否と返す。そういう問題ではないのだ。
 ただ、彼女が成人を迎え、一人の女性として育っていく様を。
 いつか、他の誰かに嫁ぐ日まで――一番近くで見守っていたい。
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