転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ~婚約式はロマンスの始まりですか!?~
 ヴィオラの部屋に行ってみるが、そこには誰もいなかった。思い当たる場所は、もう一カ所しかない。
 急ぎ足でそちらに向かい、そっと扉を開く。

「またヴィオラの勝ちかよ」

 真っ先に耳に飛び込んできたのは、タケルの声だった。

「ふふ、今日の私はついているみたいですね!」
「というか、俺までつき合わされているというのはどういうことなんでしょうね?」

 ベッドのすぐ脇に小さなテーブルを移動させて、その上にすごろく板を広げているようだ。ヴィオラとタケルが並んで腰をかけ、テーブルの上に身を乗り出している。
 ベッドのセスも、背中にいくつもの枕をあてがい、半身を起こしている。

「こんなにたくさんのお菓子は食べられないから、これはタケル様に差し上げます」
「ヴィオラ様、俺にはないんですか?」
「大人のくせに、子供から菓子を取り上げるのかよ!」
「ベッドから動けないんでね、他に楽しみがないんです」
「じゃあ、半分セスにあげる!」

 扉のところに立ったまま、リヒャルトはその光景を見ていた。
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