転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ~婚約式はロマンスの始まりですか!?~
 ベッドに半身を起こしたセスが、こちらに目を向ける。

「リヒャルト殿下、気づかず申し訳ありません」

 護衛としてそばにいた頃より、明らかに一歩引いた態度。目に見えない壁を作り上げている。

(……だが、それでいいんだ)

 裏切った者と裏切られた者。
空いてしまった距離をもどかしく思うけれど、それでもまだ――生きていただけありがたいと思う。

「リンデルトと話をしてきた」

 あえて無造作に言い放つと、その場の空気がぴしりと凍った。

「あ、じゃあ、俺、もう行くわ。いない方がいいだろ?」
「タケル様。じゃあ、お菓子は全部あげます。セスの分は、厨房からニイファにとって来てもらうから」

 すごろく板を手にし、そばに置かれていたコマ――紙に包んだクッキーだ――をごっそりと取り上げたタケルは、リヒャルトの横をすり抜ける。
 協力していたものの、傍観者としての立場を崩すつもりはないようだ。

「よくできた少年ですね――俺を助けてくれたのは彼だと聞きました」
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