転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ～婚約式はロマンスの始まりですか!?～

　先ほどリヒャルトが来た時にはうっかりしてしまったけれど、必要な場面ではしっかりと振る舞えるところも見せておかなければという意気込みの表れだ。

「待っていたわ、ヴィオラ。お入りなさい。お腹はすいていないかしら？」

　部屋の中で待っていたのは、オストヴァルト帝国の皇妃、アデリナだ。
　派手な美貌の容姿の持ち主ではないが、相応に年を重ねた美しさを持つ凛とした女性だ。
　以前は気弱な笑みを浮かべることも多かったのだが、近頃の皇妃は、毅然とした表情を見せることも増えた。


「失礼します、皇妃様。お腹は……はい、空腹です」

　講義の場から、着替えをしただけでまっすぐにここに来た。
　午後のお茶はまだで、はっきり言えばお腹が空いている。皇妃の前で取り繕った方が気を遣わせてしまうことは、ここでお世話になっている間に理解していたので、素直に自分の状況を告げた。

「そうだと思っていたのよ。さあ、こちらにいらっしゃい」

　皇妃が着席を促したテーブルには、白い絹のテーブルクロスがかけられていた。