転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ~婚約式はロマンスの始まりですか!?~
 一気に身体が冷たくなり、心臓が暴走し始める。落ち着きを取り戻そうと、スカートをぎゅっと握りしめた。

「――国がなにか言ってきましたか」

 そう問いかける声が緊張でこわばっているのが自分でもわかる。ヴィオラの緊張を素早く感じ取ったらしい皇妃は、静かに口を開いた。

「リヒャルトとあなたの婚約式を正式に執り行うことにしたの。これは――その婚約式の招待状に対する返事よ。イローウェン国王夫妻から、そろって出席すると返事がきたわ」
「そうなんですか?」

 まったく予想していなかった皇妃の言葉に、思わずヴィオラの声が裏返る。

(婚約式まで執り行うなんて、想定外よ……!)

 リヒャルトと婚約の話が出ていても、それはヴィオラと息子の縁談をまとめたがっているヤエコをけん制するためのものだと受け止めていた。
 だから、「婚約するかもしれない」というあいまいな状況のまま、ヴィオラが成人するまで話を引き延ばすものだと思っていた。
< 30 / 302 >

この作品をシェア

pagetop