転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ~婚約式はロマンスの始まりですか!?~
 婚約が決まった裏には、皇妃がヴィオラを守りたいと思ってくれたという事情があるとはいえ、いつまでもそこに甘えているのも違うと思う。
 こわごわとたずねると、リヒャルトは怪訝な表情になった。

「ヴィオラではなくて、誰を選べと言うんだ?」

 以前のリヒャルトならばともかく、今のリヒャルトなら縁談の相手には事欠かないはずだ。だが、彼がそうしないのは、周囲の人間を信頼していないということでもあると以前教えてくれた。
 リヒャルトの影が薄かった頃には、見向きもしなかった人達。皇帝の信頼を得て政治の表舞台に出たとたんに群がってきた彼らを信用できないというリヒャルトの気持ちはわからなくもない。

「それに、俺が君にそばにいてほしいと思ったんだ」

 言葉だけ聞けば、熱烈な愛の告白に聞こえなくもない。
 だがリヒャルトには、そんなつもりはないだろう。ただ、ヴィオラを見捨てたくないと思っているだけ。

< 34 / 302 >

この作品をシェア

pagetop