転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ~婚約式はロマンスの始まりですか!?~
「あなたの年齢もあるし、最低でも十六までは〝婚約〟にとどめておいていいと思うのよ。それにあなたにも〝選択する〟ための時間は必要でしょう」


 皇妃はあいかわらずのんびりとした表情だ。
 こんな風に、この人達はヴィオラに厚意と愛情を惜しみなく向けてくれる。
 いったん成立してしまった婚約を、ヴィオラの方からなかったことにするなんて許されない。
 婚約そのものはヴィオラを守るための方策でしかなかったのに、そこからあとのこともきちんと考えてくれている。

「はい、皇妃様」

 皇妃がヴィオラを大切にしてくれる。リヒャルトも大切にしてくれる。
 父からも母からも与えられなかった愛情。その愛情をこんなにも惜しみなく与えられているのに、なにが不満だっていうのだろう。

(わかってはいる、けれど……)

 言葉にはできないけれど、ヴィオラには自分がなにに不満を覚えているのかきちんとわかっている。
 家族では嫌なのだ。一度気づいてしまったこの恋心を、もっと大切に育てていきたいと思っている。
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