転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ~婚約式はロマンスの始まりですか!?~
「私は、どう戦ったらいいのかしら。まだ、全然足りていないの。知識も、経験も。どうしたら、お父様に対抗することができる? お父様に、リヒャルト様を利用させたくないの」
「子供が、そんなことを気にするものじゃない」

 不意に聞こえてきた声に、ヴィオラは飛び上がりそうになった。自分の部屋にいるのに、誰かが聞いているとは思わなかったのだ。
 ふり返って見れば、そこに立っていたのはリヒャルトだった。彼は、ヴィオラの方に歩み寄り、そっと頭の上に手を載せる。

「俺を利用したいとイローウェン国王が考えているのなら、利用すればいいんだ。ヴィオラが自ら戦う必要はない」
「――だけど、これはお父様と私の問題で」

 本当に、自分は無力だ。
 戦う力が欲しかった。父に抗うだけの力が。
 もし、国元にいた時にそう願っていたら、今頃ヴィオラの立場はもう少し違っただろうか。
 リヒャルトは、ヴィオラの前でゆっくりとひざまずく。ヴィオラは、その光景を呆然と見ていた。
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