たとえ君が・・・
第一章~たとえ君が過去に生きていても~
大きな街のとある個人病院の屋上のベンチに座るのは、助産師の瀬戸多香子(32)。
季節は秋。ナース服のまま屋上に来たことで肌寒く、自分の両手を体に巻き付ける。

救えなかった命をおもいながら多香子は空を見上げて深呼吸する。

新しい命の誕生と、生まれくることのできなかった命が集まる場所。

ねぇ、慶輔。また命を救えなかった・・・。

多香子は思い出す。

5年前の出来事を・・・。

何年たっても悲しみは癒えることがない。
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