たとえ君が・・・
そんな会話を繰り返すうちに多香子の状態は落ち着いていった。

体の状態が落ち着き、渉に抱きしめられているうちに多香子は眠気を感じ始めた。

自分がどうやってここへ来たのかが分からない。
なぜここへ来たのかが分からない。

でも、渉のぬくもりが自分をつなぎとめてくれているような、そんな気がした。


しばらくして渉はそっと多香子から体を離した。
そして先に浴槽から出ると、多香子の体を軽々と抱き上げた。

服のまま浴槽に入っていた二人。
渉は脱衣所に多香子を運び、服を脱がせようとした。

多香子ははっと我に返り、その手を止める。
「自分で・・・」
と少し頬を赤らめていう多香子に渉が笑う。
「何をいまさら。それにまだ危なくて一人にできない。無理。」
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