たとえ君が・・・
「謝んなって言っただろ？俺を頼ってくれてうれしいんだから。」
渉の言葉に多香子は改めて感謝した。



熱のある多香子をベッドに残して渉は乾燥機から二人分の服を出し、多香子に薬と朝食を用意した。再び寝室に戻ると多香子が、居心地が悪そうにしている。
「今更、遠慮すんな。そんな関係じゃないだろ？」
「・・・」
渉は多香子が体を起こすのを手伝うと、自分が作った野菜の入ったスープを渡した。
「少しはお腹にいれないと、薬飲めない。」
「・・・うん・・・」
多香子は夕べの記憶がよみがえり照れ臭いようで、渉の顔を直視できない。
「照れんなって。俺、医者だぞ？」
「わかってる。もうその話しないで。」
裸を見られたことを恥ずかしがっていることは渉にはお見通しだった。
「お前も見ただろ？」
「見てない！」
「必死すぎ。」
渉が多香子の気持ちを軽くしようとあえて明るく冗談交じりで接してくれていることに、多香子ははじめから気付いている。昔から、そういうところ、変わらない。
< 133 / 306 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop