たとえ君が・・・
多香子は渉の胸の中で慶輔の手紙を抱きしめながら、慶輔の想いを大切にしたいと思っていた。

同時に多香子は慶輔に伝えたいことができた。

しばらく渉の胸で涙した後、多香子は渉の方を見上げる。

「お願いがあるの。」
多香子の決意のにじむ表情に渉はまっすぐに見つめ返した。






渉は多香子を自分の車の助手席へ乗せある場所へ向かい始めた。
まだ熱のある多香子。その膝には渉のジャケットがかけられている。
体調が万全ではない多香子を連れ出すことはいつもの渉ならしない。
でも、今は体調よりも優先しなければならない時だと思っていた。
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