たとえ君が・・・
多香子の笑顔が少しゆがむ。それでも、多香子は笑顔でいようとしているのは、慶輔がこの場所にいると信じているからだ。

渉もそんな多香子の気持ちをわかり、微笑み返している。

「でも、ちゃんと前に進む。いつまでも悲しがってたら慶輔に叱られちゃうもん。赤ちゃんが心配するもん。」
「・・・」
「二人の分まで、私幸せになる。幸せにならなくちゃ・・・。」
「あぁ。」
多香子はそう話すと再び渉の方から体の向きを変えた。

そして目を閉じ、慶輔に感謝を告げる。

そんな多香子の後ろで、慶輔も空を見上げていた。
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