たとえ君が・・・
「でも、この子はあの子の生まれ変わりとは思わなくて。ずっと私たち家族のそばにいてくれているように思うの。」
「わかります。」
「あの子のこと、忘れなくちゃって、気持ちを切り替えなきゃって思っていたけど違うよね。」
理恵が再び多香子をみる。
「失った命も、一緒に背負って生きればいい。その場所に置いていくんじゃなくて、一緒に歩めばいい。」
「・・・はい」
理恵の言葉は多香子の心に響いた。

「これ、朝陽の言葉なんだけどね。」
はにかむ理恵は眩しく見える。

「理恵、体冷やすなっていっただろ?」
その時屋上に朝陽と渉が来た。二人とも理恵と多香子の上着を持ち、急ぎ足だ。
「ごめん。」
朝陽が理恵に上着を着せて、腕をさする。

渉も多香子に上着を着せると、心配そうに顔を覗きこんだ。
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