たとえ君が・・・
「そんなに改まらなくても・・・」
多香子が運転中の渉を見る。スーツのジャケットを脱ぎ、シャツ姿で運転する渉は今日は寝ぐせがついていない。しっかりと髪までセットしている。
「そういうわけにはいかないだろ?第一印象が大切だし。」

二人は多香子の実家に向かっていた。
やっと正月休みに入った日に、渉は朝早くに多香子の部屋に多香子を迎えに来た。

多香子の実家までは車で2時間ほどかかる。

多香子は渉が前日も遅くまで病院にいたことを知っていて、新幹線で行こうといったが、何かと自由の利く車で行くことを渉は譲らなかった。多香子の生まれた場所をいろいろと散策したいらしい。

「緊張するな・・・」
「そんな相手じゃないから。」
「でも・・・緊張するな・・・」
珍しく渉の表情が硬かった。
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