たとえ君が・・・

「お母さんが渉がかっこよすぎて緊張するって言ってた。」
「本当か？」
「うん。ごはんもたくさん食べてくれてうれしかったって。」
「唐揚げ、おいしかったなぁ。煮物もうまかった。」
「お母さんに言っておくね？きっと喜ぶ。」
渉と多香子は実家の近所を散策してから、今夜の宿泊場所へと車を走らせていた。車で30分ほどの場所にある温泉街の宿。

付き合ってから初めてのお泊りだ。

多香子は少し緊張していた。

「少し宿の周り散策しようか。」
「うん。」
「腹ごなしも兼ねてな。」
「うん。」
いつもは病院で慌ただしい時間を過ごしている二人にとって、ゆっくりとした時間の流れは貴重だった。