たとえ君が・・・
体がほかほかに温まると二人は再び温泉街を散策した。
「病院にお土産買っていくと、二人で旅行したことばれるな。」
「そっか。」
渉の言葉に多香子が手にしていたお菓子の箱を戻そうとすると、
「俺はいいんだけどな。言ったって。」
と言葉を付け加えて多香子を見る。

その言葉に多香子が一気に悩み始めると、渉は多香子の頭をポンと撫でて
「まだ、時期じゃないか。もう少し考えよっか。」
と助け船を出した。

多香子は本当は病院で自分たちのことを話してもいいかもしれないと思っていた。
でもそれで、渉が仕事をやりにくくなるのはいやだ。

院長として病院を背負っている渉を考えると踏ん切りがつかなかった。
「これ、うまそう。」
渉はそう言って漬物を手にして話題を変えようと多香子に話しかけた。
「今度、一緒に食べよ。」
「うん。」
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