たとえ君が・・・
渉は多香子の体を支えたまま急に真剣な顔になった。
「忘れられない状況だからこそ、今言ってもいいか?」
「ん?」
表情の変化に多香子は渉の顔をじっと見つめた。

「結婚しよう。」
「・・・」
緊張した表情で渉が多香子に告げる。
「ずっと好きだった。この気持ちは何があっても変わらない。ずっとそばにいたい。」
「・・・」
「多香子。結婚してください。」
「・・・」
あまりに突然のプロポーズに多香子は目を丸くした。

その表情が少しずつ崩れて、泣き顔になる。
多香子の瞳から涙があふれだすと渉は優しく微笑んだ。

この表情に何度励まされてきただろうか。救われただろうか。守られただろうか。
多香子はそんなことを考えながら渉を見つめた。
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