たとえ君が・・・
渉のサプライズはまだ終わっていなかった。
多香子の体調が回復して夕食を部屋で楽しんだあと、渉は珍しくお酒を飲んでいた。
多香子もビールを少しだけ飲み、二人は窓際の椅子に座り夜の景色を楽しんでいる。
「ちょっと飲み物買ってくるわ。」
渉はそう言って立ち上がった。
カバンから財布を取り出した渉は、多香子に封筒を一枚渡した。
「なに?」
薬指には渉の送った婚約指輪が光っている多香子が渉を見る。
「手紙。人生で初めてかもしれない。貴重な手紙。」
「え?」
さっそく封を開けようとすると渉は「俺が行ってからにして。」と慌てて部屋から出た。

多香子は渉の背中を見送ってから、ゆっくりと封筒を開けた。
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