たとえ君が・・・
多香子が手紙を読み終わった時、部屋に渉が戻ってきた。
「はい。」
そう言って泣いている多香子にいつの間にか持ってきた大きな花束を渡す。
花束を手にしながら多香子は再び顔をくしゃくしゃにして泣いた。

「これ・・・いつ・・・?」
泣きながら多香子が渉に聞く。
「旅館にあらかじめお願いしてたんだ。」
そう言って渉は多香子を抱きしめた。

「言っておくけど、俺の想いなんてこんなもんじゃないからな。」
「・・・」

二人ははじめて体を重ねた。

二人で両手を握り合い、吐息を絡める。
多香子は幸せで満ち溢れる時間に涙が止まらなかった。
体を重ねている間も、渉の多香子への気持ちが伝わってくる。
優しく熱いくらいの渉の気持ちを感じながら多香子は渉の手を握り返した。
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